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セルフケアの術


知識は商品じゃない。お金で買ったり、集めたり、棚にしまって保存しておけるものじゃない。それは情報の話。情報には、貴重なものを保管するための長い歴史と、美しい技がある。しかも、いったん保管された情報は忘れられてしまう可能性があるから、必要なときに取り出すための仕組みまで用意されてきた。図書館の司書の友だちがいたら聞いてみて。


一方で、知識は生きているもの。それは、学んだことが動き出し、日々の暮らしをガイドしているときに生まれる。新しいレシピを試してみたり、学んだことを会話の中で話したり、しんどい時間のなかでいまの自分には何が助けになるかわかったりするとき。そうして、知識は体験のなかで息づき、生を支えていく。


自分を知る旅は、終わりのない、つねに続いていくプロセス。その理由はとてもシンプル。学び続けているテーマそのものが、常に変化し続けている自分自身だから。もしセルフケアを小さな箱に入れて手に入れたり、ため込んだりできるとしたら、それは同時に、自分もその箱の中に入り、人生の変容のプロセスに置かれず、動かずにいなキャいけないことになる。


知ることをかたちづくる前向きな動きがある一方、どんな学びのプロセスにも、正反対の動きである手放すこと、学び直すことが必要になる。ただ情報を積み重ね続けて、量の多さで崩れてしまったり、動かさずに置いておいたことで古びてしまったりしないためには、ときどき、この小さな内なるミュージアムを掃除しなきゃ。自分を知る旅には、自分について抱いてきた考えを、継続して解体していくことが求められる。いまの自分をもう説明してくれなくなった考えをほどき、意味を失った好みや選択を手放していく。まるで、もう似合わなくなった服を誰かに譲るように。自分自身を少し不思議に感じること。それは自分を知る旅のプロセスに欠かせない感覚。だからこそいつも自分を観察し、問い直すことにオープンでいよう。


自分を知る旅は、自己啓発のテーマにとどまるものではなく、哲学の根本的な問いそのもの。人がどのように考え、感じるのか、こころや感情のプロセスを探究する営みは、人類の歴史のなかで多くの思想家たちが向き合ってきたテーマ。自分自身についての知は、どのように生み出されるのか。それは、外の世界についての知とどう違うのか。こうした問いには、さまざまな議論があるけれど、自己理解にはひとつ、はっきりとした特徴がある。それは、それを築く力が、その人自身の心の主体性と深く結びついているということ。つまり、自分を育てることと、自分を知ることは、切り離せない関係にある。だからこそ、ソクラテスの言葉「汝自身を知れ」は、一度きりの答えを求めるものではなく、継続的な実践を必要とする呼びかけ。日記を書くことは、その実践のひとつになりうる。日々の言葉の積み重ねが、少しずつ、自分という存在を照らしていく。


自分を知ることが、繰り返し学び手放し絶え間ない動きのなかで育まれるものだとしたら、それは単に自分についての理論を組み立てることではない。お腹が痛いと感じ取れることも、この関係で、ここまでが限界だと言葉にできることも、どちらも立派な自己理解。そして、自分の選択が自分にとってどんな影響を与えているのかを意識的に見つめ、これは自分が健やかでいられることなのか、それとも負担になることなのかと問いながら選ぶことも、自己理解のひとつ。自分を知るとは、頭の中の考えだけでなく、身体の感覚や日々の選択にまで根を下ろした、生きた実践。


感情や思考に気づき、それを見つめていくプロセスは、頭の中だけのことじゃない。自分が世界とどんなふうに関わっているか、その多様な関係性のなかで育まれていくもの。だからこそ、ときに友人や、自分を大切に思ってくれている人たちのまなざしが、自分自身をよりはっきりと映し出してくれることがある。そうした他者の視点は、偏った思い込みから少し距離をとる手助けをしてくれたり、自分でも気づかないうちに抱えていた歪んだ自己像をほどいてくれたりする。自己理解とは、自分を守るための幻想を重ねていくことではなく、むしろ自己欺瞞から少しずつ離れていく道のり。その道の途中で、他者の存在は静かな鏡のように、わたしたちを支えてくれる。


文: Anelise De Carli

イラスト:Chana de Moura(マンダラルナー2026ブラジル版より)




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