夢 ―― 目覚めの反対。でも、それだけじゃない。
- ツキヨミノ

- 6月27日
- 読了時間: 4分
更新日:7月28日

植民地主義がもたらしたさまざまな影響――その中には、露骨なものもあれば、静かに沁みこむようなものもある。そうした波が現代人の世界観に刻みつけたもののひとつに、「夢は現実の“おまけ”のようなもの」という考え方がある。夜の夢は、昼の現実から生まれた、二次的な現象。ただの記憶のかけらで、意味は少なく、重みもない。
この解釈はアリストテレスの時代にまでさかのぼり、いまでは多くの人にとって常識となっている。でも、それだけが夢の見方じゃない。
先住民族の世界観を尊重し、紹介しようとする文化人類学者たちのあいだでは、夢をめぐる別の語りが息づいている。彼らが出会ってきた多くの先住民族は、夢をただの“内なる現象”とは捉えていない。ルネサンスや啓蒙主義を通して、夢は“個人の心の働き”とされ、20世紀になると“無意識”や“精神の動き”と名前を変えて語られるようになった。でもその変遷のなかでも、夢と目覚めの世界を切り離す考え方は、ずっと残ってきた。
眠りのなかで見るものは、理性が機能を止めたときに現れる象徴であり、意味を見出すには解釈が必要。夢の内容は分析され、分類され、心理学の流派ごとに違った“意味”を与えられてきた。でも根底にあるのはひとつ。「夢は非合理で、現実に比べれば頼りないもの」だという分断の感覚。まるで、昼間の世界が本物の鏡で、夢はそこに映るぼんやりした幻影かのように。
そんな理解とはまったく異なる夢のあり方を、ナスタッシャ・マルタンという人類学者の記録から見てみよう。彼女は、ロシアのカムチャッカ半島に暮らす先住民族「エヴェン」の家族とともに過ごし、そのなかでダーリャという女性に出会った。
ダーリャの夢との関わり方は、私たちの“夢を語る”という習慣とはずいぶん違っていた。マルタンが語るには、彼女が夜に見た夢を人に話さないのには、ふたつの理由があるという。
ひとつは、「ただ日中の記憶をなぞるような夢」は、夢とすら呼ぶに値しないということ。つまり、心理学が大事にするような夢は、エヴェンにとっては取るに足らないもの。
もうひとつは、本当に意味のある夢は別にあるということ。それは“出会いの夢”と呼ばれるもの。そこでは、森の動物や、すでにこの世を去った存在たちと出会い、話をし、学ぶことができる。目覚めている時間にはアクセスできない世界。別の時間と空間。別の存在とつながる場所。
アメリカの人類学者ハロウェルはこう言った。「子どもたちは夢のなかで学校に行く」。
でも、この夢を見るには練習がいる。心とからだを整え、夢の技術を育てる必要がある。かつてはシャーマンたちが、そのために人生を捧げていた。けれど今は、彼らがいないなかで、自分自身のなかに夢の道を見つけなければならない。
こうした夢の捉え方は、ブラジルの先住民族、たとえばクレナック族やヤノマミ族の世界観にも根づいている。彼らの言葉に耳を傾けるなら、エドソン・クレナックやダヴィ・コペナワの語りが道しるべになる。
夢は目覚めとは反対の現象かもしれない。でも、それだけじゃない。
この言葉を借りたのは、ペルーの人類学者マリソル・デ・ラ・カデナ。
異なる世界観同士が出会うとき、ひとつに統合しようとするのではなく、それぞれの違いのまま、つながりあう場がひらかれる。無理に「完全に翻訳」しようとしないこと。そこにしか生まれない響きがある。
夢と現実、昼と夜、現代と先住のあいだを行き来する感覚。わたしたちはその狭間で、いくつもの世界の声に耳をすませながら、新しい地図を描きはじめることができる。
参考文献:
ナスタッシャ・マルタン『夢の東方へ──エヴェンの人々の応答とシステミック・クライシス』La Découverte(パリ)、2022年
マリソル・デ・ラ・カデナ『地の存在たち──アンデス世界をめぐる実践のエコロジー』Duke University Press(ダーラム/ロンドン)、2015年
文:アネリーズ・デ・カルリ
ソニャリオで、夢にまつわるさまざまな物語と出会ってみてね。このノートは、違った世界観を旅し、夢という体験との新しい関係を育てていくための小さな羅針盤。夜ごとのまどろみの中にひそむ、まだ知らない世界の声に、そっと耳をすませてみて。

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